飲食業界23年、現役料理長です。
『きゃー!料理長!太郎さんがー!』
『…了解です~』
「太郎さん」というのはゴキブリのことで、飲食店で使われる「隠語」になります。
今回は、飲食店スタッフの間で使われる色々な「隠語」について解説します。これから飲食店で働くつもりの方は知っておいて損はありません。
お客様の立場では、知らなくていいと思います。なぜなら、お客様を不快にさせないために、飲食店スタッフは隠語を使用しているからです。
例えば、トイレに行くことを「3番行ってきます」と言います。
*店舗により「1番」「5番」など様々です
なぜ、飲食店スタッフは「トイレのことを番号」で言うのか?
あなたがお客様の立場で、飲食店スタッフが『トイレ行ってきま~す』と目の前でいうと、何となく嫌な気分になりませんか?
飲食店は衛生管理が重要なため
飲食店アルバイトや社員となり「働き始めたときの心構え」として飲食店の色々な隠語を解説します。
目次
そもそも「隠語」って何?
隠語とは「仲間や専門家たちで通じる言葉」や「言い回し」のことです。
飲食店の隠語は、各店舗で独自の呼び方もあり「すべての飲食店で同じ呼び方ではない」点に注意が必要です。
飲食店により隠語の違いがありますが、害虫は『○○さん』のような名称であり、トイレなどは『〇番』という数字で表すことが多いです。
飲食店の「太郎さん」はゴキブリの隠語
飲食店でゴキブリを発見した場合『太郎さんお願いします』という店舗があります。主に和食の店舗ではゴキブリのことを「太郎や花子」と呼びます。
以上のように、ゴキブリの「サイズによる呼び分け」もあるようです。
『太郎さんお願いします』とは、「ゴキブリが出たので退治してください」の意味。
『太郎が出ました!』のような使い方をすると、何となくお客様に気づかれてしまうので注意が必要です。
オープンキッチンでない時は、何も言わず無言で退治します。主に「お客様から見えるところやオープンキッチンの店舗」で隠語は使われます。
飲食店の多くには害虫駆除の業者が入っており、最近は店舗でゴキブリを見る機会が少なくなっている現状です。なので、『太郎さん』などの隠語を使う機会も減っています。
ゴキブリや害虫が多い店舗は、業者へ依頼するなり対応が必要です。詳しくはこちらで解説しています
「太郎さん」以外の飲食店の隠語
ここでは、太郎さん以外の飲食店の隠語をご紹介します。飲食店で働かない方は、あまり見ないでくださいね(笑)
飲食店の隠語「山(やま)」
寿司屋で「海の物を扱う」ことから、海と逆の「山(山に海鮮物はない)」が由来になったといわれています。
*所説あり
「本日のヤマ」とホワイトボードに書いたりもします。どちらかというと和食の店舗で使う言葉ですね。
飲食店の隠語「川(かわ)」
しかしながら、わたしは長らく飲食業界で働いてますが『川』は使ったことないです。
「本日のオススメ」という言葉は、使っても良い気がします。
飲食店の隠語「アイドルタイム」
このアイドルは「idle」で「空回り・なまけている」などの意味で、乃木坂46のようなアイドル(偶像)の意味の英語ではありません。
詳しくはこちらもご覧ください
飲食店の隠語「あたる」
鍋でソースや煮物を作るとき『鍋底あたるから気をつけて』などと使います。「鍋底焦げやすいから気をつけて」という意味です。
これ『あたってるからダメ!(これ焦げてるから使えない)』などにも使います。
飲食店の隠語「シルバー」
昔の西洋では銀製のナイフやフォークが使われていた(銀は変色しやすく食材の異変を察知しやすいから)ことが由来です。
『シルバーセットした?』などで使います。
飲食店の隠語「バッシング」
お客様のテーブルからお皿やグラスをさげる意味。
『バッシングしてきて(空いてるお皿さげてきて)』のように使います。
飲食店の隠語「ボウズ」
売り上げがゼロのこと。
「ボウズ→毛がない→もう毛がない→儲けがない」ことが由来のようです。
*諸説あり
飲食店の隠語「兄貴あにき」
先に使用する食材・仕込んだ物のこと。
新しく仕込んだ同じ料理食材を「弟(おとうと)」といいます。
同じ食材の仕込んだものを『古いやつこれー!』というとお客様の印象が悪いので「兄貴・弟」と呼び分けています。
飲食店の隠語「3番」のような数字
トイレのこと。
店舗により「番号が違うこと」があり、タバコの一服や休憩も、番号で呼ぶ店舗もあります。
飲食店の隠語「せきまえ」
お客様から注文を受け『遅い!』とクレームを受けた料理やドリンク。
『この〇〇せきまえで!』「クレームついてるから急いで持っていってね。早く作ってね。謝罪しといてね」のように使います。
飲食店の挨拶「おはようございます」も隠語?
飲食店に出勤したとき、朝じゃなくても『おはようございます』と挨拶します。実はこれも飲食店の隠語の1つです。
一般的なお仕事は、皆揃って「朝9時出勤・12時から休憩・17時退社」のような流れなので、朝は『おはようございます』で始まり、帰り際は『お疲れ様でした』という挨拶になります。
一方、飲食店の出勤時間は「朝~昼~夕方」のようにバラバラです。
「出勤時間が皆同じではないこと」が、昼や夕方に出勤しても『おはようございます』という挨拶の理由になっています。
「早くからご苦労様です」という言葉が「おはようございます」になったといわれています。
アルバイトの挨拶「おはようございます」について詳しくはこちらもご覧ください
飲食店の隠語「つご」って何?
飲食店で忙しいときに「つご〇個」「つごう〇個」という言葉を使う時があります。
『つご』って何?と思われるでしょう。
「つご(つごう)」とは「都合」と書き『すべての数量をあわせて、合計全部で〇個です』という意味があります。
「都」には「取りまとめる、統率する」という意味があり「合計してまとめると」という文章を縮めて都合と呼びます。
例えば、『鶏の唐揚げ、つご5個です』というのは、お客様は同じではないが「鶏の唐揚げが5個オーダーで通ってますよ」ということ。
なぜ、オーダーをまとめて伝える必要があるのかというと「同じ料理を1度に作るのが効率的(早くお客様に提供できる)」だからです。
店側の効率に関する言葉なので「隠語」になっています。
まとめ
今回は「飲食店の隠語」について解説しました。
わたしが最初に働いた和食のお店は「隠語を多用」していました。そう考えると、和食の世界で多い言葉であるといえます。ポイントをまとめます。
飲食店の隠語には「お客様をもてなす気持ち・気づかう気持ち」が溢れています。
まちがっても『ゴキブリ出たー!』などと、飲食店で働いてるときに言わないように注意してください(笑)