飲食業界23年、現役料理長です。
今回は「接客における料理の出し方」について解説します。
目次
料理を運ぶときの「言い方」について
お客様に料理を出すときには「どのような言葉」を添えるべきなのでしょうか。
飲食店の接客では、丁寧語や尊敬語以前に「間違った日本語」を覚えてるケースがよくあります。
「ハンバーグ」を提供するとして考えてみましょう。
以上のように「おかしな日本語」を使っていないでしょうか。
「何か」がハンバーグに変わるわけではないので『ハンバーグになります』はダメです。
『ハンバーグのお客様』は「お客様自身がハンバーグ」のようで失礼なのでダメですが『ハンバーグをご注文のお客様は?』なら可能です。
『ハンバーグです』は間違ってはいませんが、断定の助動詞「だ」の丁寧語なので△。居酒屋のようなノリのいいお店では良いのかもしれません。
「です」を丁寧な言い方にすると、ハンバーグで『ございます』となります。
しかしながら、働いてるお店には「その店のルール」があります。接客用語も同様であり、いくら日本語として間違えていたとしても、その「お店の雰囲気にあわせた言い回し」が存在します。
部下やアルバイトの立場で間違った日本語を指摘しても「店長に良くないイメージを持たれるだけ」なので、お店のルールに従いましょう。
部下の立場で正論を主張しすぎると人間関係が悪くなることも…
飲食店の離職する原因は「人間関係の悪さ」なので注意しましょう。
飲食店の人間関係がつらい…最悪な上司・先輩アルバイト・パートの対処法
お店のルールや言い回しを変えたいのなら、ご自身が店長や企業の役職に付くことをオススメします。
料理を出すのは「右から左から?」
料理やドリンクの提供は「右から?左から?」について解説しますが、居酒屋やファミリーレストランなどのリーズナブルな価格のお店では、あまり重要視されてなく高級レストランのような単価が高いお店では徹底されています。
なぜ、左から料理を出すのか?
ホールスタッフが「右手で料理やドリンクが乗ったトレイ(お盆)を持ち、左手で料理などを提供すればお客様の邪魔にならない」からです。
左手は『利き手じゃないので料理が出しづらい』といって、右手で右側から料理を出すのは「正式なスタイル」ではありません。
ドリンク類は「右に置くというのが正式なスタイル」です。
ドリンクを提供する時に「左側から右に置くのは不自然」なので、お客様の右側に立ちドリンクを提供します。
一方で、料理を右から出す例外もあります。
以上が「料理を右から出すパターン」になります。
友人や知人の披露宴に出席した経験がある人は理解できると思いますが「客席は丸テーブル」になっています。
丸テーブルなのは、お客様後方に立ち「料理を左から、ドリンクを右から出しやすい」ためです。
一方で、披露宴でも参列者が多い場合や、友人などは「壁際や窓際の席で長方形のテーブル」のことがあります。そのようなとき、1番端っこの席の方は「左から料理を出せるスペースがない」場合があり右側から料理とドリンクを提供します。
お客様が「左利きだ」とホールスタッフが気づいたときは「右側から料理、左側からドリンク」と逆に出すこともあります。
居酒屋では「料理よりも飲みがメイン」であるため、席の作りが「狭く効率的になっている」ケースが多くあり、左側から料理を出すこと自体が無理な場合があります。
居酒屋は、格式を重んじてる「ホテルやレストランとは業態が違う」と理解しましょう。
定食屋では、お盆(トレイ)に料理が沢山乗ってる状態でお客様に出されます。この時も左側から出すのが正解ですが、カウンターでは前から、壁際では右から料理を提供します。
和食料理の出し方
日本料理の出し方は「左から・右から・前から」と意見が分かれています。なので「そのお店の方針に従う」のがいいでしょう。
なぜなら、料理の出し方には「そのお店の考えがある」からです。
和食料理を「右から出す」場合
日本料理の提供マナーでは「基本は右から」という意見があります。
古来の日本文化では「〜しながら」という形は無作法とされ、1つ1つ動作の「起点と終点」が決まっています。
なので「箸を止める」マナーをお客様に求めていると考えられます。
また、お客様が動く可能性があるなかで料理を提供するのは「料理をこぼしたり、熱い料理をお客様にかけてしまう」危険があります。なので、わざと右から声掛けをして動きを止めます。
ちなみに、わたしが幼少の頃はテレビを見ながらご飯を食べることを禁止されていました。
日本の文化的には「〜しながら」というのは行儀が悪いとみなされます。
和食料理を「左から出す」場合
先ほど解説したように「料理は左から、ドリンクは右から」が基本です。
基本なのですが「これは西洋料理のスタイル」です。西洋料理では、お客様が料理を食べるのを邪魔しないサービスを大切にしています。
和食料理を「前から出す」場合
個人的に1番心地良い日本料理のサービスは「前から料理を出すスタイル(座敷で)」でした。
大河ドラマの会席シーンでも、武士の会席シーンでは前から接客しています。
一方で、農民や町人の会席では「背後から料理を出しており」接客する人とお客様の関係性で「どこから料理を出すのか?」が決まるように思います。
「前から接客」する場合は、接客するスタッフの息が合わないと、後ろのお客様にはお尻を向けることになり高度な接客といえるでしょう。
*接客するスタッフ2人が背合わせになり「同じスピードで」料理を提供しながら横へスライドしていくイメージです(大きな座敷宴会)
以上のように「日本料理においては右から・左から・前から」など色々なパターンがあります。
個人的には「お客様が心地良い時間を過ごせるのが一番」だと思うので、そのお店のやり方に従うべきだと思います。
接客マナー料理の出し方「和食」
日本料理の出し方は「左右や前といった違い」がありますが「和食の配膳」場所は決まっています。
「ご飯」はお客様からみて左に置きます。
日本では「左を右より高貴な位置」と考えていたようです。
コースで提供される汁物は、ご飯と一緒に出せないので真ん中におきますが「定食などでは右側に汁物」が置かれます。
「香の物」は「ご飯と汁物」の上の位置ですが、定食ではメイン料理が置かれます。メイン料理がある場合の「香の物」は、ご飯の横に添えられることが多く「とくに置き場所が決まってない」印象です。
日本料理では「コップやグラスは左側に置くのが基本」でした。しかしながら、戦後に西洋料理が普及したことにより、今は右側に置くこともあります。
以上のことから、定食屋さんでも「お盆の上での料理の置き場所が決まっている」と理解できます。
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接客での「お皿の下げ方」
披露宴や西洋料理では「お皿の上にシルバー(ナイフやフォーク)が時計の4時20分の位置(ハの字型)」に置いてあったり「紙ナプキンが丸めてあったり」するのが『お皿を下げて下さい』という合図になっています。
また、次の料理を出すときに「前の料理が残っている」場合、ホールスタッフから『お下げしましょうか?』と訪ねることや「勝手に料理を下げること」は失礼とされています。
テーブルに乗らない場合に『お下げしてもよろしいでしょうか?』と訪ねることが多いですが「お客様の好みにあわない」「食べられない料理」のこともあり、お客様から『下げてください』と言うのが一般的です。
なので、あなたがお客様の立場として同じような状況の場合、『食べれないから残してるんだよ。それを察して皿を下げないなんてサービスが悪い!』と思うのではなく、自身の意思として『下げてください』とハッキリ伝える必要があるということです。
意思(イエスorノー)をハッキリさせる風潮は西洋では当然で、「あいまいさ」があり心を察する日本の文化とは大きく異なるのが影響していると考えられます。
食事メインのお店で「空いてるお皿を下げる」のは注意
ファミレスなどのように「食事メインのお店」で、食事が終わったお皿を下げられると『早く帰れ』とお店側から言われてる印象をお客様に与えるからです。
また、食べ終わったお皿を下げられると、他のお客様から『あの人は何をしてるのだろう?』と思われるのが嫌な可能性もあります。
食事目的であれば「すぐに帰る」ので、何かしら「早く帰りたくない理由がある」と推察できます。
そのようなお客様はナーバスになっていることがあり『空いてるお皿をお下げしてもよろしいですか?』のような些細なことが「揉める原因」になりかねません。
その言葉の中には「ゆっくりしていってくださいね」という意味が含まれており、お客様の立場からすると心地良い気分になります。
一方で、『お茶も飲んだし帰ろう』『お茶は結構です。もう帰るので』という行動を促す側面もあり、『温かいお茶をお持ちしましょうか?』という声かけは素晴らしいサービスといえます。
まとめ
今回は「料理の出し方と下げるまで」について解説しました。ポイントをまとめます。
料理の出し方は「基本的に左から」と覚えておきましょう。
日本料理の出し方は色々ありますが「お客様にとって心地良いサービス」が正解なので、お店の方針に従いましょう。
以上が「料理の出し方と下げ方のポイント」になります。
各飲食店により「考え方が違う」でしょうが「お客様が心地良い時間を過ごせるサービス」が理想だと頭の片隅に入れておいて下さい。
次の記事>>サービスとは何か?接客の仕事で必要なサービスとは
接客に必要なテーブルマナーをしっかり身につけたいなら、高価格帯のレストラン、和食料理店、有名ブランドホテルの派遣などで働くのがオススメです。
難しい技術を早めに身につけておくと、どんな飲食店でも対応できるでしょう。