飲食業界23年、現役料理長です。
今回は「食材の原価計算方法」について解説します。
飲食店経営において「原価計算」は必須です。食材のみならず、ドリンクの原価についても知ることができます。
また、料理人で「料理長」など食材原価を管理する立場を目指すなら、食材原価について理解しておくべきでしょう。
目次
「商品1つに対して」の食材原価計算方法
新メニューや季節のメニューを考えるときに必要になる計算方法です。
食材費は、あらかじめ「食材と量」調味料の「使う量など」を計算する必要があります。
以上のように、1つの商品に使う食材の「すべての食材使用単価」を計算する必要があります。
使用単価をすべて計算した合計が「200円とわかった」とします。
そして「希望売値を1000円」と仮定すると…
以上の流れから「ボンゴレロッソの原価率は20%である」とわかります(×100は「%で表すため」に必要)
商品1つに対する原価率は重要ですが、他にも「食材単価を知る」ことが原価計算の裏テーマにあります。
食材単価を知っておくことは、後に「原価調整」のときに役立つからです。
以上の点から、クオリティーは同じで安い食材単価の物を使用し「商品1つの原価調整」をしたり、同じ価格でも上質な物を使用し「商品のクオリティーをあげる」などが可能です。
1日の売り上げに対する「原価率計算方法」
ランチの商品原価や、ディナーの商品の原価が一律なわけないので、1日の売り上げに対する原価計算方法は、あまり役に立ちません。
「こんな計算方法があるんだ」と知っておく程度でいいでしょう。
「売値と原価率を先に決めたいとき」の計算方法
「売値と原価率を先に決める計算方法」で作った料理は、かなり「ショボい商品や料理になる可能性が高い」です。なぜなら、売価と原価率を「勝手に設定している」からです。
- この商品には〇〇な価値があるので「売価△△にしたい」
- 食材使用単価で珍しい食材を使用しているが「お客様の入店動機のために原価率50%で提供しよう」など
- あくまで「お客様のために」という気持ちが重要です。
食材原価で重要な「歩留まり」
食材原価を考えるうえで「歩留まり」は重要になります。
例えば、牛のロース肉の塊が「1kgで2000円」だったとします。
この牛ロース1kgは「脂の部分も含んだ状態で1kg」です。極端に脂が多い箇所は「削ぎ落として」ほどよく脂を残し牛ロースを使用するとした場合「実際に使用できる量は900gになった」とします。
1kに対して実際に使える部分が900gなら「歩留まり率は90%(900g÷1000g×100)ということ」になります。
ただ、このような歩留まり率を算出する作業は「一般業務をこなしながら」すべての食材に対して行うのはとても効率が悪いです。
野菜は「歩留まりよりも平均価格」で考える
野菜は「比較的安い傾向にある」こと、季節や気象状況により「価格が変動する」ことから平均価格で設定します。
野菜に関しては、店舗や企業が八百屋さんと半年など長期契約して、その間は価格変更しない(季節や気象の影響を受けても)こともあります。
仕入れ金額が高い食材ほど「原価に与える影響が強い」ので、まずは金額の高い食材から歩留まり率を調べましょう。
大手企業の原価率計算方法
飲食店大手企業の場合「1つの料理や商品の原価率は本部が算出」してくれます。使う食材や業者も本部が一括で交渉して価格をできるだけ安くおさえます。
なので、大手企業で働いてる場合「1つの料理や商品の原価率を考える必要はあまりありません」
*原価率や歩留まりについて理解しておく必要はあります
棚卸し金額とは…飲食店では月末に1回「棚卸し」という作業をします。棚卸しとは「当月の在庫食材の合計金額を算出する」作業です。
棚卸しが正確でないと、売り上げに対する原価率の数字も正確ではなくなります。大手企業では「売り上げに対する想定原価率と、当月の食材原価率に1%の誤差がある」と始末書を書かなければなりません。
『たった1%で⁉︎』と思われるかもしれませんが、売り上げが大きくなった場合の1%は、かなりの金額になるからです。
「食材原価と棚卸し」もう1つの目的
棚卸しを正確にすると「正確な当月の食材原価」が分かります。総売り上げに対する「ドリンク売り上げ率」や「料理売り上げ率」「チャージ料金の売り上げ」など細かく店舗の内情がわかります。
そんな、食材原価の割合とは「別に」分かることがあります。それは社員などが「横領していないか?」です。
以上のケースがあります。
個人事業主や大手企業では、あまり雇われ店長・料理長などの横領はないですが「中小企業のセキリュティが弱い企業」では結構あります。注意しましょう。
本来、月末の報告書をしっかり見ればわかることなので横領は絶対にやめましょう。
上記は極端な例を書きましたが、明らかにおかしいことに気づくはずです。本当に当月ドリンク使用金額が50万円の場合「当月仕入れの50万円が必要か?」と思われるでしょう。
仮に横領していなくても、当該店舗の責任者に「管理能力がない」ことが分かります。また、別のケースとして「毎月の原価率が大きく変動する店舗」も疑われます。
このように、食材原価率を考えることは「料理による利益を考える」だけではなく「店舗の内情を知ること」にもつながります。
まとめ
今回は「食材の原価計算方法」について解説しました。
以上が、食材原価の計算方法のポイントになります。食材原価を計算することは、料理やドリンクの原価率を明確にするだけではなく、店舗の内情を知るのにも役立ちます。
飲食店の横領は「高い確率」でバレます。やめましょう。
また、食材管理能力が不足しているなら、少しずつ正確に原価率を把握できるようになりましょう。飲食店で独立したときに必要になるスキルです。
最後まで、お付き合いいただきありがとうございました。