飲食業界23年、現役料理長です。
今回は「料理人が使う包丁メーカー」について解説します。
目次
料理人にとって包丁とは
料理人にとって包丁は「武士にとっての刀」と同じ。良い刀を見分けられる武士は一流といわれますが、それと同じように良い包丁を見分けられることは一流の料理人として重要なことです。
包丁は「料理人の才能を引き出す素晴らしい道具」
包丁の良し悪し次第で、食材の良さも台無しになりかねません。それだけに、包丁ひとつで食のレベルが変わると言っても過言ではありません。
服部幸鷹氏
服部学園理事長の服部幸鷹氏が「堺刀司のサイト」で以上のようにコメントされていますが、まったくその通りだと思います。
わたしも20年近く同じ包丁を使っていますが「苦楽を共にしてきた相棒」のような存在です。
料理人にとって「包丁はかけがえのない存在」です。
料理人「包丁セット」とは
調理師専門学校や調理師養成施設に入学された方々は、学校入学時に「包丁セット」を購入されると思います(授業で使うので)
しかしながら、わたしのように調理師養成施設を卒業せず、調理師免許証も独学で取得してる方は「包丁セット」を持っていないのではないでしょうか。
そんな方のために、これさえあれば対応できるという「包丁の種類や本数」をご紹介します。
料理人に「包丁は何本必要?」種類について
調理師専門学校の包丁セットは「8〜14本」など、色々な用途に分かれたものが一般的です。
しかし、街場(一般的な飲食店)のキッチンでは「何10本」も包丁は必要ありません。
『これさえあれば対応できる』包丁数本をご紹介します。
以上の3本あれば、街場の飲食店で働くのに充分対応できます。
*働らくお店によっては「出刃包丁」もいるかもしれません(魚をさばくお店など)
牛刀・柳刃包丁・ペティナイフについて解説
牛刀…牛刀は「世界中で広く使われている西洋包丁」です。フレンチナイフ・シェフズナイフ・万能包丁などとも呼ばれます。三徳包丁に比べると刃が長く幅が狭く、筋などの切りにくいものを切るのにも優れています。
柳刃包丁…柳刃包丁は「細く刃渡りが長い」ことが特徴です。関西では刃の形状が菖蒲の葉に似ていることから正夫(しょうぶ)ともいわれます。柳刃包丁は別名を「刺身包丁」とも呼ばれており、名前のとおりお刺身を切るときに活躍します。
ペティナイフ…ペティナイフとは「刃渡りが9〜15㎝ほどの洋包丁」のことです。普通の包丁より小ぶりなペティナイフは、食材の面取り・皮むき・ジャガイモの芽やトマトのヘタをくり抜くときなどに最適な包丁です。
ペティナイフは選び方を間違うと、かなり使い辛くなります。失敗しないペティナイフの選び方はこちらをご覧ください。
『俺は包丁セットが欲しいー!』という方は、包丁セットを購入されてもいいですが、街場の一般的な飲食店ではあまり使う機会が少ないと思います。
料理人「包丁の持ち運び方」の注意点
調理師専門学校や養成施設で包丁セットを購入された方は「鍵付きのハードケース」があると思います。
鍵付きのハードケースを使用し「包丁を職場へ、または家に持ち帰る」などは大丈夫なのですが、状況により「銃刀法違反の疑い」をかけられることがあり注意が必要です。
わたしのように「3本しか包丁を持ってない」方は「布製の包丁入れ」があります。
包丁を持ち運ぶには、以上の点に注意が必要です。
わたしの部下(アルバイト)は、家でも料理するらしく「出勤の度に包丁を持ち歩いて」いました。
ある日、警察の方から電話があり、その部下を「取り調べしている」という内容でした。布で刃を包んでいたようですが、カバンの中に包丁が入っていたからです(包丁ケースはなし)
部下は友人の家で料理を振る舞うために包丁を所持していたらしく、友人への確認・職場の上司(わたし)への確認など、無実を証明するために長い時間を要しました。
「厳重注意」で済みましたが、包丁の持ち運び方を間違えると「多くの人に迷惑」をかけます。気をつけましょう。
プロ御用達・料理人に有名な包丁メーカー
プロの料理人が使う包丁は「料理のジャンルによって好むメーカーが違う」ように思います。
日本料理と西洋料理など「料理ジャンルで好む包丁メーカー」が変わります。
日本料理人が好む「包丁メーカー」
日本料理は歴史や日本の自然・四季による「旬な食材」などに通ずることがあるように「日本古来の伝統がある」包丁メーカーが好まれます。
「藤次郎・関孫六・関虎徹・堺孝行・堺一文字」など、日本を代表する刃物産地や刀匠の歴史と関係したメーカーになります。
西洋料理人が好む「包丁メーカー」
西洋料理人では「Misono(ミソノ)」一択です。
日本刃から受け継いだ「伝統技術と最新の技術を融合させた」モリブデン鋼ステンレスで一世風靡しました。
Misono(ミソノ)包丁は多くの調理師から人気なこともあり、こちらで詳しく解説しています。
現在は、他のメーカーも「モリブデン鋼ステンレス製品」の包丁を販売していますが、時代の先駆者的存在でした。
注目の「包丁メーカー」グローバル
最近注目してる包丁メーカーは「グローバル」です。
持つところも「オールステンレス」の包丁で、見た目もオシャレです。
『イタリアのデザイン・ドイツの堅牢・日本の精密』をコンセプトにしており、とても魅力的な包丁メーカーです。
問題点として「グローバル」の売りである「ハマグリ刃に研ぐのが難しい・持ち手のドット部分に食材カスがたまり不衛生」などの意見もあります。
家庭の「落ち着いて料理できる環境」には向いているかもしれませんが、忙しい街場の飲食店で使う包丁には向かないかもしれません。
包丁は一生もの
高級な包丁は「一生もの」といわれるように、手入れやメンテナンスをしっかりしておけば長年使用できます。
わたしが現在使用してる「牛刀は15年・ペティナイフは20年」使っています。
牛刀は「Misono(モリブデン鋼ステンレス)」で、ペティナイフは「堺一文字光秀(鋼)」です。
今回、包丁メーカーについての記事を書いていて、久しぶりに新しい包丁が欲しくなってきました笑
堺一文字のペティナイフは、ブランド名が消えかけてるほど使ってますからね。そろそろ買い替え時かもしれません。
調理師専門学校や養成施設を卒業、または入学された方は包丁セットを持っていると思います。
しかしながら、わたしのように「調理師専門学校などを卒業せず独学で調理師になった人」または家庭で料理する機会が多く「料理が好きな人は、絶対に自分の包丁」を買ってください。
長年自分の包丁を使用していると、他の人や会社の包丁を使うと「切りにくく気持ちが入らない」です。余計な雑念があるイメージ。
冒頭で服部先生のお言葉を紹介しましたが、料理人にとって包丁は「武士の刀」のような存在です。厳しい飲食業界で長年頑張れてるのは、もしかすると相棒(包丁)のおかげかもしれません。
ちなみに、長年使用してるペティナイフは「亡き祖父に貰った最後のお小遣いで購入した」ものです。あのペティナイフを見ると、今も祖父のことを思い出します。
切れる切れないだけでなく「自分の包丁を持つこと」には色々な意味や想いがあります。
そんな「一生物の包丁」を購入してみて下さい。