飲食業界23年、現役料理長です。
今回は「飲食店の回転率を上げる7つの対策」について解説します。
まず、「飲食店の回転率計算方法」を理解しましょう。
目次
飲食店の回転率「計算方法」
例えば「席数が20席」の飲食店に、開店から閉店までに「100人のお客様が来店した」とします。
この場合の回転率は「100÷20=5」となり、1日の間にお客様が5回入れ替わった(回転した)ことになります。
回転率が多ければ多いほど「売り上げが増える」のが一般的です。
飲食店の回転率は「業態により」重要度が異なり、平均客単価が安い業態ほど回転率の多さが必要になります。
次に、飲食店の業態による平均回転率をご紹介します。
飲食店は「業態により平均回転率」が違う
飲食店の中でも「牛丼店やラーメン店・ファーストフード店などは回転率が多い」といわれています。1日に10回転以上することも珍しいことではなく「回転率の多さが関係する業態」といえます。
客単価の安いファーストフード店などは「薄利多売の利益構造」であることが多いです。サイドメニューで客単価を上げる対策がよく見られます。
客単価が中程度の居酒屋は「お酒の売り上げ」で利益率が変わります。回転率を考えるほど繁盛してればいいのですが、居酒屋業態で料理ばかり売れても利益は増えません。
高単価なフレンチや割烹のような業態は「回転率を考えてるお店が少ない」でしょう。なぜなら「1回満席になるだけで、かなりの売り上げ見込める」からです。
わたしもフレンチで働いた経験がありますが、オーナーから回転率についてのお話を聞くことは無かったです。高単価なお店が大切にするのは「リピーター」です。
高単価のお店は「顧客を絶対に手放してはいけない」ので、顧客に対する接客や料理内容に「かなり神経質」になります。なので、そのようなお店は仕事に対して「かなり厳しい」と覚えておきましょう。
飲食店回転率を上げる「7つの対策」
飲食店の回転率を上げる必要があるのは「ファーストフード店のような客単価が安い業態」です。なので、大手牛丼店やラーメン屋・ファーストフード店の経営に回転率を上げるヒントがあります。
「早く料理を提供できる」準備をする
飲食店の回転率を上げるには「料理を素早く提供する」必要があります。なので、早く料理を提供できるように「事前に」準備しておきます。
以上が「料理を早く提供する流れ」の例です。
注文が通ってから「スープを温める、トッピング具材を用意してカットする」などしていては遅いわけです。一般的な飲食店でも、しっかり準備することが重要です。
料理やドリンクのメニュー数を限定する
料理やドリンクを早く提供するには、ランチタイムのような繁忙期に「メニューを限定する」といいでしょう。
メニュー数が多すぎると、1つの料理に手を取られて提供するのに時間がかかります。
回転率を理解していない飲食店で見かけるのは、限定ランチメニューを提供しながら多くの一般メニューも提供しているお店。
このような営業をしているお店は、暇な時は良いのですが繫忙期になるとキッチンが壊滅的(料理が出るのが遅い&美味しくない・盛り付けが汚い)になります。
また、お酒を扱うお店では、一般メニューをランチ営業で提供してしまうと「ディナータイムの来店が減る」可能性があり(お店の立地によります)ランチ限定メニューは回転率だけでなく飲食店の経営に関して重要になります。
ラーメン屋さんやマクドナルドでは、かなりメニューが限定されてる印象です。
注文や会計処理にかかる時間を短縮する
ホールスタッフがお客様の注文をとり「それをキッチンに伝える」お会計でホールスタッフが呼ばれて「レジ清算に捕まる」と、仕事の効率が悪くなり回転率が落ちます。
大手チェーン店では「券売機」があります。
券売機は「古いシステム」のように思われがちですが、回転率を上げるために活躍しています。
「注文をとる手間」「会計の手間」の2つを解消しているからです。実は他にも「従業員が横領するのを防ぐ」というメリットもあります(発券数や金額と売り上げが合わないとすぐにバレるため)
アナログな券売機ですが「とても優秀」なわけです。券売機は優秀なのですが「場所をとる・アナログさがダサい」などの理由から、セルフオーダーやセルフレジのようにデジタル化されています。
また、注文・会計処理のスピード化には、先ほど解説した「限定メニュー」も関係します。限定メニューを用意することにより、余計な計算が必要なくなるからです。
POSシステムを導入していても、一般メニューと限定メニューを同時進行すると注文がばらけてしまい仕事量が増えます。手書き伝票のお店では、なおさら繫忙期の限定メニュー化をオススメします。
片付けを早くする
飲食店の回転率を上げるためだけではなく「早い片付け」はとても重要です。
なぜなら「片付けは、1銭の売り上げにもならない」からです。
逆に、片付けが遅いと「回転率が下がる・余計な人件費が必要になる」などマイナス面が多いです。なので、片付けは普段から早くする意識を持ちましょう。
例えば、ランチ限定「1プレートメニュー」のような場合は、1つのお盆の上にすべての食器が乗っているので片付けも簡単になります。
しかしながら、一般メニューも提供してしまうと食器の大きさが違って、片付けが遅くなる傾向にあります。
経営者は、料理やドリンクの提供だけでなく「効率的な片付け」も考える必要があります。
*ファーストフード店のやり方を参考にしましょう
狭いテーブル・固くて高いイスにする
「ファーストフード店や喫茶店・カフェ」は、比較的居心地が良いお店が多いです。なので、コーヒー1杯で長い時間お客様が過ごされます。
一方で、ラーメン屋は「テーブルが狭かったり・イスが固く居心地が悪い環境」であることが多いです。あれは、回転率を上げるために「ワザと居心地を悪く」しています。
高級な居心地が良いお店では、回転率を考えるのではなく「客単価を上げる」ことを考えるべきです。
ファーストフード店とラーメン屋の居心地の差は『テイクアウト・デリバリーが出来るか?』が関係しています。
テイクアウト・デリバリーを行う
ファーストフード店や牛丼・有名カフェ店は「テイクアウトやデリバリー」を行なっています。
なぜなら、客席は「自宅やオフィス」などにも広がるからです。
一方で、ラーメン屋やパスタ屋など「汁物」で、時間が経てば「麺がのび、味が変わりやすい」業態はテイクアウト・デリバリーに不向きだといえます。
なので、先ほど述べたようにラーメン屋などは「居心地を悪くして回転率を上げる形が必要になる」のです。
ラーメン屋などは「テイクアウト・デリバリーの新しい形を作る」ことが今後の課題ともいえます。
「客席稼働率が高くなる」ようにテーブルを配置する
テーブルが大きく「分割できない」場合「4名席に2人」や「2名席に1人」が座ることとなり客席稼働率が下がります。
客席稼働率は「店舗立ち上げ設計」の段階で、しっかり考えておきましょう。
ラーメン屋などでは「1人用にカウンター席」があり「テーブル席は2人で使用できる」ように作られているのが一般的です。
物件の形によっては「回転率を上げるのに不向きなところがある」ということです。立ち上げの段階でしっかり考えましょう。
客単価が高い場合は客席稼働率が悪くても経営が成り立ちますが、客単価の安いお店は客席稼働率が重要になります。
*新型コロナウイルスの影響で客席稼働率が下がっている背景もありますが「感染対策」は重要です
飲食店業態別「回転率ランキング」
飲食店の回転率について「色々な業態や客単価」で解説してきました。そこで、飲食店の回転率が高い業態のランキングをまとめておきたいと思います。
以上が、飲食店の回転率が高い順になります。
飲食店の回転率ランキングを見ますと「客単価が低い・中程度・高い」の並びになっていることが分かります。
また『テイクアウト・デリバリーが可能なのか?』『お酒の提供が可能なのか?』で「回転率にこだわるか否か」の分岐点にもなっています。
一時流行した「立ち飲みバル」は「回転率と客単価の両方が狙える」画期的なビジネスモデルでした。
しかしながら『価格(中~高単価)のわりに、ゆっくりできず落ち着かない』『お酒を飲んで立ちっぱなしは疲れる』などが原因で、頭打ちしたように感じます。
先ほども述べましたが「回転率が高いだけで儲かる」わけではなく、飲食店にとって大切なのは「利益構造を作れるか」です。
現在の業態、または将来独立して挑戦してみたい業態の「回転率と客単価」をしっかり理解し、必要なら回転率を上げる対策を実行しましょう。
まとめ
今回は「飲食店の回転率を上げる7つの対策」について解説しました。
以上が「飲食店の回転率を上げる7つの対策」になります。
個人店や小規模な企業では「注文や会計処理にかかる時間を短縮する」ことを対策できていないお店が多いように感じます。
「セルフオーダーやセルフレジ・POSレジ管理」などは会計のスムーズさだけでなく「人件費削減」にもつながります。
1度投資すれば「後は回収するだけ」なので、早い段階で導入すべきでしょう。
「高単価な飲食店」や「回転率を気にしない業態」では不用かもしれませんが、回転率を上げたいお店には必須のシステムです。