飲食店を個人経営した場合の年収はどれくらい?

飲食店の個人経営者の年収はいくら? 店長の仕事
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飲食業界23年、現役料理長です。

今回は「飲食店を個人経営した場合、年収ってどれくらいなの?」という疑問にお答えします。

結論からいうと

年収はマイナス(個人店やりながらアルバイト)〜2千万円と幅広いです

平均年収は「560〜620万円」といわれていますが、誰もが平均年収を取得できるわけではないので、安易に独立しないよう注意が必要です。

飲食店オーナーの取り分(年収)とは、どのように決まるのでしょうか?

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飲食店オーナーの取り分はどれくらい?

飲食店を経営しオーナーの取り分はどれくらいなのでしょうか?

飲食店オーナーの取り分は「売り上げの10%程度」

『売り上げの10%?少ない…』と思われるかもしれませんが、ひと月「1000万円の売り上げなら100万円の取り分」が見込めます。

また、こじんまりしたお店をオーナー1人で経営するなら「(オーナーの)人件費30%」プラス取り分10%で「売り上げの40%」が取り分となります。ひと月「100万円の売り上げなら40万円」が取り分となります(運転資金として10万円は貯めておく必要があります)

いずれにしても、飲食店を個人で出店する前に、オーナーが「ある程度の取り分(年収)を設定しておく」必要があります。

なぜなら、オーナーとして『〇〇万円の年収が欲しい』と考えるところから、店舗の立地や家賃、店舗の広さ(席数)を決めたり、スタッフの雇用人数や「社員を雇うか?アルバイトを何人使うのか?」を決めるからです。

飲食店の基本的な考え方でいうと、オーナーの年収も含めた「年間総人件費率が年間売り上げの35%以内」で設定します

なぜかというと、飲食店の売り上げは「すべてオーナーのもの」ではなく、店舗の運転資金(家賃・人件費・食材費など)や急な機材の修繕費に必要だからです。

利益は「すべてオーナーの取り分」と考えていると店は潰れます。

明確な、飲食店オーナーの取り分(給料)を例として設定してみましょう。

例 店舗の総売り上げ年間1億円

  • 年間総人件費率を35%で設定すると…予算は3500万円
  • オーナーの取り分を…1000万円と設定
  • 店長・料理長の給料…400万円✖️2人=800万円
  • 社員の給料…300万円✖️5人=1500万円
  • スポット的なアルバイト…200万円

上記のように設定し「年間総人件費」から予算を組んでみます。

オーナーが1000万円の年収にする場合、年間の総売上が1億円と考えると、ひと月に約840万円の売り上げが必要なことがわかります。

客単価3000円なら2800人の来店客が必要。30日で割ると1日あたり約94人。1日で綺麗に2回転するとは思えないので「60席以上の客席が必要である」とわかります。

「60席以上の広さの店舗家賃は高額である」ことや、独立して最初から「社員5人+店長・料理長も雇用できるのか?」など、この計画が現実離れしていることが理解できます

では、現実離れしていない計画はどのように作成すればいいのでしょうか?

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飲食店経営で「年収1000万円以上」を狙うには利益構造が必要

先ほどの例とは逆に『9席の小型飲食店舗でも年収1000万可能!』のよう記事を見かけますが、それらは理論上の計算に基づいたもので、リアルな飲食店事情では難しいです。

ずっと「ランチタイム・ディナータイム満席」なんてお店は珍しいですから…

実際に、そのような店舗があったとしても、繁盛店をこなすにはスタッフが多く必要になります。結局、人件費がかかるわけです。

スタッフを雇ってみたものの、忙しい時期が終わると人件費はとても高くなります。なので、本当に飲食店経営で年収1000万円以上を狙うのなら、人件費も含めた「明確な利益構造」が必要になります。

利益構造とは                                   家賃・人件費・食材費・電気ガス光熱費・販促費(宣伝費)などを設定し、どのような経営スタイルで「何を売って、何で利益を出すか?」を明確にすること

わたしの知人で、年収1000万円以上の経営者は、1店舗目で利益構造をしっかり作り「店舗展開してる」人達です。

個人経営の飲食店1店舗で「年収1000万円」は難しいということ

飲食店経営は「最初の店舗で利益構造を作れたら」あとは店舗展開していくだけで、年収1000万円以上を狙えます。大手の飲食店企業やチェーン店が「全国展開してる理由」です。

飲食店のメニューには特許のようなものもなく再現性が高いので、立地や店舗規模の条件さえあえば、既存店と同じような利益率で店舗展開できるのです。

そんな飲食店の経営を「社員時代に学ぶ」べきなのです。

どんぶり勘定や気分で経営していて、年収1000万円以上は厳しいでしょう。

利益率が高い食材・商売

  • 粉もの系(お好み焼き・たこ焼き・ラーメン・うどん・パスタ・ピザ・ご飯もの)
  • *手打ち蕎麦のそば粉は意外と高いです
  • お酒を売るのが基本(BARは典型的)
  • 焼き鳥などの串物系(串に刺すだけで値打ちアップ)
  • 二次会や貸切パーティー
  • 高単価な商売

上記のようなものから、あなたが得意とする料理やジャンルを考えて「何で利益を生むのか」をみつけましょう。

飲食店経営の「地獄な面」について

飲食店は「オープンして1年で30%、2年で50%のお店が廃業する」といわれている難しい業界です

よくあるのが、飲食業界以外のお金持ちの方が「飲食店を始める」パターン。内情をしっかり理解していないので、よく廃業しています。

*税金対策なら成功しやすい

飲食店は他の業界からみると、いつも満席で儲かってる印象を与えますが「人件費・食材費が売り上げの50〜60%、家賃や光熱費、販促費で30%」を占め、純利益10%ほどです。

また、食材は小売業とは違い「早く使わないと鮮度が落ちたり、最悪腐らせてしまうと全てロス」になります。忙しい店舗は、食材が回り続けるので良いのですが、飲食店のヒマな店舗って地獄です。

わたしの知人でも、ひと月「週1の休日」で働いて「オーナーの給料0円」の人や、「昼間はアルバイト(自店舗の売上がないから)して夜は自分の店舗を営業してる人」もいました。

知人で最速の飲食店廃業は「3ヶ月」の人もいて、飲食店経営は非常に難しいことが理解できます。

*3か月は運転資金の準備を怠りすぎですが…

飲食店経営が難しい理由

  • 競合する飲食店が多い
  • 「立地」で、すべてが決まる(簡単に移転できない)
  • 売り上げが安定しない
  • 「美味い・安い」が当然な社会の風潮
  • ブラック企業のやり方は個人店では通用しない
  • マンパワーで売り上げが左右される(良い人材確保が難しい)
  • 店舗規模により売り上げに限界がある

以上が、飲食店経営が難しい理由です。

飲食店は数多くあり、同じジャンルや価格帯のお店は競合します。その結果「美味い・安いが当たり前」になり、売り上げも安定しません。

ブラック企業のやり方「長時間労働・休みなし」ですが、大手企業は「仕入れが極端に安いことや立地が良い」など、繁盛店の条件も兼ね備えています。

ブラック企業と同じように『長い時間働けば大丈夫だろう』と軽く考え、立地選びに失敗すると廃業するリスクが高まります。

また、飲食店はマンパワー(スタッフ個人の力)で店舗の雰囲気や料理の仕上がりが変わります。個人店で良い人材を確保(多くの給料を支払う)することは難しく、オープン最初の時期は家族の助けが無いと厳しいです。

他にも、個人の飲食店の規模(席数が少ない)は小さく「売り上げの限界が決まっている」のも飲食店経営の難しいところです。

飲食店の立地にあった「料理内容・価格か?」「明確な利益構造があるのか?」「運転資金は充分にあるのか?」を深く考えないと飲食店経営は地獄となります

飲食店「経営の実態」

飲食店経営の実態は「廃業率1位」の業界です

飲食店経営は参入障壁が低く、飲食業界での経験がなくても「開店しやすいのが大きな原因」です。参入障壁が低く開店しやすい分「失敗しやすい業態」となります。

飲食店は「10%の純利益があれば良いほう」といわれており、見た目の派手さや華やかさとは裏腹に儲けにくい業態なのです。

飲食店の利益が低い原因は、「家賃・人件費・食材費がほぼ固定費」として必要になるからです。

他の業界から脱サラして「飲食店をやりたい!」とお考えの方は、飲食店の内情をよく理解すべきでしょう。

『儲けが少なくても良いから飲食店を持ちたい』こんな意見のお金持ちの方が出店のお話を持ち掛けてくることが多いのですが、大切な部分を見落としています。

飲食店経営には「マイナス(赤字)のことがある」

飲食店経験者の方でも『食っていけたらいい…』くらいの考えで独立する人がいますが、ほぼ失敗します。

『食っていけたらいい…』のなら、企業に雇われていれば良いのです。

なので、『独立して儲けてやるぞー!』という勢いで開業するくらいが丁度良いです。

飲食店経営で副業?やめておきましょう

働き方改革の影響で、残業時間をカットされた人たちが「飲食店経営を副業でやる」のが流行っているようです。

しかし、飲食店経営を副業でやることはオススメできません。飲食店経営は、数字だけでは計り知れない目に見えない部分が「飲食店経営に慣れてない人にはわからない」からです。

例えば、「ホールのサービス・接客・キッチンの料理の味」などは目に見えないです。目に見えない部分の内容や意味を理解せず、数字上だけで飲食店経営すると「高い確率で失敗」します。

飲食店開業を数字だけで考えると失敗する例

「食材原価率を5%下げてほしい」とオーナーから言われた場合、簡単に下げれます。粗悪な安い食材に変えればいいだけだからです。飲食店経営を知らないオーナーは、数字上で原価率が下がったと喜びますが、それは料理のクオリティーが下がっているのです

料理のクオリティーが下がると、お客様は満足できないので食べに来なくなります。こうして、客離れが進み店舗は潰れます。

飲食店経営において数字は重要ですが「内容を分かっているか?」が非常に重要になります。そういった、細かい内容がわからないうちは「飲食店経営を副業でやらない」のが賢明です。

経営の数字は「見るもの」でなく「読み取るもの」

「食材費・人件費60%、家賃光熱費など15%、広告宣伝費15%、利益10%」という数字は目安でしかありません。

食材費の中でも、「フード・ドリンク仕入れ」に分けて原価率を計算して内情を細分化していく必要があります。人件費も同様に、「社員・アルバイト」に分けて労働生産性を細分化します。

上記の内容が理解出来ないのに、軽いノリで「副業で飲食店」なんて危険すぎます。

まとめ

今回は「飲食店経営者の年収」について解説しました。

  • 飲食店経営者の年収は、マイナス〜2000万円まで幅広い
  • 平均年収5〜600万円といわれているが、そんなに安定した仕事ではないので鵜呑みにしないこと
  • 飲食店経営で年収を増やしたいなら、1店舗目でしっかり利益構造を作り「店舗展開」する
  • 副業で飲食店経営をするなら、内情をしっかり理解する

以上が、飲食店経営者の年収についてのポイントです。安易に独立開業して、痛い目にあわないよう注意してください。

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